秋季展 奥絵師 狩野派~紅葉を愛でる が始まりました
令和5年のテーマは「奥出雲 鉄師・可部屋の風景」です。春季、夏季展では田能村直入の作品をとおして明治初期の可部屋の風景をお楽しみ頂きました。
9月11日からの秋季展のタイトルは「奥絵師 狩野派~紅葉を愛でる」です。艶やかな狩野派の作品を背景に、藩主に紅葉を愛でて頂くため、櫻井家の歴代当主が用意した御成道具や工芸品、紅葉狩りや野遊びの道具などを展示しています。
櫻井家では松江松平家の御成に際して狩野派の画でおもてなしをしてきました。これは狩野派が幕府の御用絵師であったことからですが、同時に、櫻井家が戦国武将塙団右衛門を祖とする、武家の出であり、その誇りを持ち続けていたこともあります。
企画展示室正面には、狩野元信「寒山拾得」、狩野常信「海月図」、狩野栄信「旭松鶴二幅対」を背景に5代利吉の文書箱を展示しました。この文書箱には、櫻井家の家督や鉄山経営や家督、あるいは系図などが納められてますが、櫻井ではなく「塙源兵衛利吉」始祖である、塙団右衛門の姓を記し、家紋も櫻井の「丸に梶の葉」と塙家の「抱き柏」の二つを入れてあり、武家「塙」の誇りを表しています。
櫻井家に伝わる刀剣(室町)を数振り展示しています。
塙団右衛門が戦った、大坂の陣の絵図、塙の甲冑、2代直胤の甲冑や系図なから始まり、正面右側の第5代利吉まで、櫻井家の歴史を順に展示しています。
正面左からは、6代苗清に関する展示を行いました。苗清は豊かな趣味人で文学を好み、茶の湯を松江藩家老 有澤弌善(ありさわかずよし/明々庵)に学び、明々庵を通じて不昧公から“常足庵”の席名を賜っています。
苗清は、松江班代7代藩主、松平治郷(不昧)公を櫻井家にお迎えしています。不昧公の御成は、1803年で、櫻井家では数年をかけて御成座敷を増築し、滝のある庭を造り、様々な調度を整え準備をしています。御成になった不昧公は、櫻井家の佇まいや周囲の景観を喜ばれ、流れる滝に「岩浪」、借景となる山に「寿宝山」の名を与えています。
準備した座敷や庭園の絵図を配し、不昧公から賜った「岩浪」の書や、御成道具、御成の部屋割り図などを展示しています。背景は狩野春卜の「秋草」としました。
次のコーナーは、狩野永雲の襖絵「琴棋書畫」を背景に祝いの杯や酒器を展示しています。
御成になった藩主の希望で献上したが、明治の廃藩置県の際に改めて櫻井家に帰ってきたというエピソードのある「根来四つ
碗」も展示しています。
櫻井家の暮らしのコーナーでは、櫻井家の日々の暮らしの中で用いられた自家染の法被や、筒染、絞り、型染された藍染や更紗の古布を展示しています。
前には、野弁当や屋外で煮炊きをする道具、お酒を燗する道具など野遊びの道具類を展示しています
これから、紅葉の美しい季節を迎えます。また、新そばのおいしい季節でもあります。
歴代藩主も愛でた櫻井家の景観をお誘いあわせお楽しみください。