夏季展 墨跡・山水~仙境に遊ぶ が始まりました
令和5年の可部屋集成館の年間展示テーマは「奥出雲”鉄師・可部屋”の風景」です。6月13日から9月中旬までは、夏季展として「墨跡・山水~仙境に遊ぶ」をお届けします。
「仙境」とは仙人が住むかと思われるほどの俗界を離れたところ。1803年に櫻井家に遊んだ不昧公も、櫻井家の庭を流れる滝を愛で
「山ふかみなかれての 世のにこりをば しるとも見へぬ 瀧の岩浪」
という歌を残しています。櫻井家が所蔵する墨蹟・山水を、可部屋の風景とともにお楽しみください。
夏季展の展示室正面には、明治10年、11年と櫻井家に逗留し多くの作品を残した、南画家田能村直入の作品を展示しました。
右側の「槙原眞景」には、幕末期、櫻井家が松江藩の命により鉄の増産を図った槙原たたら(御趣向たたら)の高殿や山内が可部屋独特の風景として描かれています。よく見ると鉄を運ぶ馬の姿も見えます。
右から2番目は、櫻井家の庭園です。不昧公が命名した滝「岩浪」、借景となる山「寿宝山」そして、直入が意匠した煎茶茶室「菊掃亭」が描かれています。
直入は、櫻井家本宅のある内谷の四季を十二月の詩と画に描き「紅緑深處」、「風月無盡」という二巻の詩画帳に収めています。この詩画帳は春季に引き続き展示しています。
正面ケース右手には、「呑谷瀑布、上流、記、下流」の三幅、「清聴庵」、「掬掃亭記」の額を新たに展示しています。
直入は櫻井家のある内谷の風景や人々の暮らしや営み、自然中にある様々な音など、に清々しさを聴き、『奥出雲”鉄師・可部屋”の風景』に心を寄せてきました。
直入の「記」や「詩」もお楽しみください。
正面左手には、市河米庵の書 『唐 玄宗 鶺鴒(セキレイ)頌』と直入の山水画を背景におき、2代直胤の甲冑や直胤が広島城を出て、可部に移ったことを語る資料として櫻井家に受け継がれる「福嶋左衛門太夫正則居城請取渡之覚書」などを常設展から移動し展示しました。併せて、櫻井家に伝わる武具、馬具も多数展示しています。
さらに展示室を進むと、今回の展示のもう一つのテーマである「墨跡」のコーナーです。
「墨蹟」とは僧侶、とくに禅僧の記した筆跡のことをいいますが、今回は櫻井家に伝わる墨書、墨画の中から、臨済宗中興の祖といわれる白隠禅師の書、江戸中期の儒学者 細井広沢の墨書「菊水自在手 弄花香満衣」、江戸時代前期臨済宗の僧 清巌宗渭の「一宿覚云々」などを展示しています。そして、墨蹟とともに刀剣、碁盤、硯などを展示し、凛とした涼やかさを感じさせる展示を目指しました。
江戸時代の浮世絵や泥絵、主に狩野派の絵師による扇面など櫻井家の暮らしの中にある、涼しさもお楽しみいただければと思います。
引き続き櫻井家・庭園だけでなく、周囲の景観も含め皆さんに楽しんでいただきたいと考えています。
夏季展 墨跡・山水~仙境に遊ぶ を初夏から初秋に移り変わる『奥出雲”鉄師・可部屋”の風景』と共にお楽しみ下さ