令和6年 秋季展「藩主お成り飾りと茶具」
- 秋季展 : 藩主お成り飾りと茶具
- 期 間 : 令和6年9月11日~12月初旬
今回の展示は、「お成り飾りと茶具」です。
櫻井家5代源兵衛利吉は、1738年に松江藩から下郡上座を仰せつかり、1755年には鉄師頭取を拝命します。以来藩主の信頼も深く、1803年に松江藩第7代藩主、松平治郷(不昧)公を櫻井家にお迎えしています。
櫻井家では不昧公のお成りにむけ、数年をかけて御成座敷を増築し、滝のある庭を造り、様々な調度を整え準備をしています。お成りになった不昧公は、櫻井家の佇まいや周囲の景観を喜ばれ、流れる滝に「岩浪」、借景となる山に「寿宝山」の名を与えています。櫻井家の当主は第6代源兵衛苗清です。
櫻井家へのお成りは、下記のように続きます。
- 享和3年(1803) 第7代藩主 松平治郷公(不昧公)
- 文化8年(1811)/文化10年(1813)/文政2年(1819) 第8代藩主松平斎恒公
- 天文6年(1835) 第9代藩主 松平斎貴
- 安政4年(1857)/慶応2年(1866)/慶応3年(1867) 第10代藩主松平定安公
その都度、室内には、器や床飾り、掛軸、襖、屏風など武家好みの調度が入念に揃えられてきました。
今回は、記録を基に、藩主をもてなした書や画、調度を中心に展示しています。
企画展示室正面の中心には、不昧公筆「独座大雄峯」を展示しています。 不昧公の「不昧」の出典は、禅問答集『無門関』の中で百丈和尚(禅宗の祖)が問うたに「不昧因果」という言葉からで、「独座大雄峯」の書は『碧巌録』にある同和尚の問答を不昧公がしたためたものです。
この書を中心に、禅にちなんだ茶掛、不昧公に関わり深い茶具を展示しました。 不昧公と明々庵宗意(5代有澤弌善)そして櫻井家6代可部屋源兵衛苗清との関係を示す諸道具や書簡も展示しています。
お迎えした苗清は豊かな趣味人で文学を好み、茶の湯を松江藩家老 有澤弌善(ありさわかずよし/明々庵)に学び、明々庵を通じて不昧公から“常足庵”の席名を賜っています。
企画展示室、左手には準備した座敷や庭園の絵図を配し、不昧公から賜った「岩浪」の書や、お成り道具、お成りの部屋割り図などを展示しています。背景は狩野永徳の屏風「竹林」としています。
今回、1803年頃の櫻井邸と庭園を描いた「櫻井庭園図」(作者は不詳)も興味深いものです。また、櫻井家と松江藩との親密さを表わすものとして、櫻井家に伝わる松江藩第2代藩主松平綱隆(寶山院)公の「梅鷹繪」も展示しました。(上段の写真左手)
常設展に連続して右側奥には、櫻井家5代源兵衛利吉の文書箱と、三幅対「壽老人 鶴」を展示。この三幅対もお成りのために準備したものです。
次の展示コーナは、不昧公やその姫様である玉映の書や画、不昧公の書簡、そして最後の藩主である、10代定安(慄堂)公の書も展示。
前面には不昧公好みの蕎麦膳や割子そばの器の原型である四角い器を並べました。
櫻井家には、お成りの際に準備した調度品の記録、や献立なども多数残っています。
御成になった藩主の希望で献上したが、明治の廃藩置県の際に改めて櫻井家に帰ってきたというエピソードのある「根来四つ碗」を展示していますが、今回は献上の経過などを記した、「演説書」も併せて展示しました。
これから、紅葉の美しい季節を迎えます。また、新そばのおいしい季節でもあります。
歴代藩主も愛でた櫻井家の景観をお誘いあわせお楽しみください。