秋季展~藩主をお迎えして~が始まりました。
今期の通年テーマを「可部屋の“おもてなし”」とし櫻井家の祝いの席や年中行事、多くのお客様をもてなしてきた、美術工芸品、調度品を展示してきました。
秋季展ではテーマを「藩主をお迎えして」とし、藩主をお迎えしての櫻井家最上級のおもてなしについて展示をしました。
櫻井家には、松江藩第7代藩主 松平治郷(不昧)公、第8代藩主斎恒公、第9代藩主松平斎貴公、そして第10代藩主松平定安公と4代にわたり御成がありました。そのほか少人数でのお殿様の巡村を加えると、8回にも及びます。
初めての御成は、1803年の不昧公です。櫻井家では、不昧公をお迎えするため、数年をかけて御成座敷を増築し、滝のある庭を造り、様々な調度を整え準備をしています。御成になった不昧公は、櫻井家の佇まいや周囲の景観を喜ばれ、流れる滝に「岩浪」、借景となる山に「寿宝山」の名を与えています。
正面の展示は「不昧公ゆかりの書画や茶道具」などを揃えました。
前述の、「岩浪」の書と歌をはじめ、不昧公幼少の頃の画や書、そして不昧公の四女玉映の書などを展示しました。茶道具では不昧作の茶杓「時雨」、不昧公が育て松江藩のお抱え塗師だった、初代漆壺斎(こじましっこさい)、二代、三代漆壺斎の棗(なつめ)、利休七種(長次郎七種)の慶入による写し七碗、等を展示しています。
不昧公の御成の際の櫻井家当主は第6代勘左衛門苗清(1749~1820)で、苗清も豊かな趣味人で文学を好み、茶の湯を松江藩家老 有澤弌善(ありさわかずよし/明々庵)に学び、明々庵を通じて不昧公から“常足庵”の席名を賜っています。今回は、席名を賜った記念に釜師 下間(しもつま)庄兵衛に依頼した「常足庵」の名入りの釜や有澤弌善作の花入も展示しています。
次のコーナーは、狩野春トの華やかなふすま絵を背景に朱塗葵紋付本膳を展示。その上手には、狩野派の画を背景にお迎えした藩主の冠を置く「冠棚」を展示しています。
櫻井家では松江松平家の御成に際して狩野派の画でおもてなしをしてきました。これは狩野派が幕府の御用絵師であったことからです。
歴史資料として、御成の際の部屋割りや、部屋割絵図、御成座敷を整備した当時の庭園絵図なども展示しています。
その次のコーナーは、狩野派の画を背景に黒塗葵紋付本膳を当日の献立表とともに展示しました。山海の珍味を取りそろえた豪華な晩餐を彷彿とさせます。不昧公好みの「蕎麦膳」なども展示しています。
御成になった藩主の希望で献上したが、明治の廃藩置県の際に改めて櫻井家に帰ってきたというエピソードのある「根来四つ碗」など、すべてのコーナーを「藩主をお迎えして」の櫻井家のおもてなし調度で統一しました。
櫻井家への御成は、秋に集中しています。周囲の景観を含め櫻井家の「おもてなし」だったのでしょう。
これから、紅葉の美しい季節を迎えます。また、新そばのおいしい季節でもあります。
歴代藩主も愛でた櫻井家にお誘いあわせお出かけください。