令和6年夏季展「南画家・田能村直入とその一門」
- 夏季展 : 南画家 田能村直入とその一門
- 期 間 : 令和 6 年 6 月 11 日~9 月中旬
令和6年夏季展は、田能村直入とその一門の作品を中心に構成しています。可部屋集成館には明治の南画家、田能村直入の作品が多数収蔵されていますが、その大部分が明治の初頭にここ櫻井家で描かれたものです。
そのため、企画展では「田能村直入の作品を資料館で鑑賞する」だけでなく、現在の櫻井家や櫻井家庭園、さらにその周辺の景観と一緒に見ることにより、「資料館に展示してある作品から、当時の風景、人々の暮らし、さらには櫻井家の歴史やたたら製鉄の様子にまで思いを巡らすことができる展示」を目指しました。
最初に、「呑谷瀑布図(源流・記・下流の三副)」を櫻井家の歴史のコーナーに展示しました。「呑谷」は 1644 年、広島県の可部から高野(現庄原市)を経由して、上阿井に入った櫻井家が最初に拠点としたところです。「呑谷瀑布」の「記」には直入が当主の案内でその地を歩いた様子も描かれています。
正面には、直入の「王堂冨貴」、「風月三昆」を日本刀とともに展示しました。この作品は直入が明治 11 年から 12 年に櫻井家に逗留した際に描いた作品で、日本刀は、南北朝から室町期に作刀されたもので、櫻井家に伝来するものです。暑い夏に「清涼」を感じていただければと思います。
次のコーナーは、直入の作品を櫻井家における活動をテーマごとに展示しています。
直入は、櫻井邸のたたずまいを「清聴軒」と名付け、庭園を「清聴軒図」(右側)として描いています。この庭に煎茶道の茶室「菊掃亭」を意匠し建てていますが、『掬掃亭は櫻井氏の遊亭なり・・・・』ではじまる「掬掃亭記」には、櫻井家の歴史や当主の人となり、事業の様子なども記されています。現在の櫻井家住宅(国の重要文化財)・庭園(国の名勝)とともにお楽しみください。
直入の煎茶道具も多く残されています。展示されている煎茶茶碗の中には、地元の大東焼の窯元に作らせ、そこの直入が絵付けをしたものもあります。
直入は、櫻井家の敷地内の「一丈庵」で創作活動を続けていましたが、そこには愛用の絵画道具が残されています。
背景の掛け軸は、「槇原真景之図」です。ここには当時、櫻井家の主力たたらであった「槇原たたら」の高殿や従業員の住居など(槇原たたら山内)が描かれ、鉄を運ぶ馬も見ることができます。
その後、槇原には角炉がおかれ昭和 20 年まで櫻井製鉄所として稼働していました。現在は「たたら角炉伝承館」として復元され公開されています。
この展示ケースの前側には、「内谷真景」という 12 枚の絵と散文を展示しています。当時の櫻井家や内谷鍛冶屋の賑わい、鎮守神社に参拝する人たちなど人々の暮らしが周囲の農村景観とともに生き生きと描かれています。
次のコーナーには、松江出身の直入門下の兼本春篁の作品や、直入の曾孫 田能村直外の作品を展示しています。
また、前面には「櫻井家のハイカラ」と題し、櫻井家の暮らしで使われた洋食器や家人が愛用した帽子などを展示しました。
さらに、夏らしく日々の暮らしの中で用いられた浴衣や、ガラスの器など「清涼」をテーマに展示をしています。
壁面には、直入と櫻井家との出会い、櫻井家での活動などにスポットをあてた展示を行っています。
鉄師・奥出雲櫻井家に伝わる たたらと文化~南画家 田能村直入とその一門~を夏の可部屋・内谷の景観とともにお楽しみください。